『氷柱の美女』

初放映日:1977/8/20
放映枠:90分


CAST


明智小五郎
天知 茂
文代
五十嵐めぐみ
小林
大和田獏
恒川警部補
稲垣昭三
三谷
松橋 登
岡田
菅貫太郎
菊子
野口ふみえ
田村刑事
北町嘉郎
斎藤(執事)
稲垣善一
老婆
神田時枝
柳 茂
荻野 尋
主婦
村上記代
浮浪者
小田草之助
アパートの人
篠原靖夫
運転手
喜田晋平
箱根の刑事
羽生昭彦
谷山二郎
加島 潤
 
柳 倭文子
三ツ矢 歌子

 

STUFF


プロデューサー
佐々木孟
製作担当
森 文弥
原作
江戸川乱歩
(「吸血鬼」より)
脚本
宮川一郎
音楽
鏑木 創
撮影
平瀬静雄
美術
猪俣邦弘
絵画製作
田口雅巳
録音
島田 満
照明
石渡健蔵
編集
鶴田益一
助監督
増田 彬
記録
真下栄子
美粧
細井栄子
メーク
三岡洋一
進行
鞠子 政巳
平田 一夫
装置
田村武男
装飾
安田道三郎
調音
松竹録音スタジオ
現像
東京現像所
衣装
松竹衣装
製作主任
石和 薫
衣装協力
三松
インテリア協力
ドレクセル
監督
井上梅次
製作
松竹株式会社
テレビ朝日

映像特典
DVDトレーラー


STORY:

 激務を癒すために箱根・芦ノ湖畔を訪れていた明智小五郎は、霧の中一人の美女と逢う。その女性の名は柳倭文子。財産家の未亡人である彼女を巡って、画家の岡田とグラフィックデザイナーの三谷は奇妙な、しかし命懸けの決闘を行おうとしていた。二つあるワイングラスには毒が入っている。どちらか一つのワイングラスを選び、呷らなければならない。そして、生き残った方が倭文子の愛を得る、という決闘だ。先に意を決してグラスを呷った三谷は勝利を確信する。しかし、岡田は隠し持っていた硫酸で三谷の顔を焼こうとした。逆襲を受け、自らの顔が醜く焼けただれてしまった岡田はそれを恥じ、芦ノ湖に身を投げ命を絶った。

 三谷の愛を受け入れた倭文子だったが、一人息子の茂と執事の斎藤はそれを不満に思っていた。そんな時、茂が誘拐されるという事件が起こり、恒川恒川警部補が捜査を担当することになった。女装した三谷が倭文子として身代金1000万円を持って行ったが、犯人の奸計により警察は翻弄され、倭文子自身が拉致されてしまう。奇怪な容貌をした犯人は、倭文子がかつて一人の男を死に追いやったと口にした後、彼女を凌辱するのだった。

 ことここに至って、恒川警部補は明智小五郎へ事件解決の助力を要請した。完璧に計画された犯罪であり、犯人の残虐性と倭文子の魔性の美しさが絡み合って美しい犯罪模様を描き出す、と主張する明智は誘拐された倭文子が簡単に殺されることはない、と語る。そんな時、犯人が柳邸に侵入、明智小五郎に対して警告を発した。犯人を追いかけていった明智と恒川警部補は、三谷の指摘により、廃工場に捕らえられていた倭文子と茂少年を発見した。身代金が手付かずだったことから、犯人は倭文子が苦しんでいる様子を見つめていたに違いないと推理し、その言葉とおり、犯人が潜んでいた痕跡が残されていた。その痕跡から、犯人の歯形を得ることができた。

 三谷は、芦ノ湖畔での決闘の話を明智に語った。身を投げたはずの岡田が生きていて、倭文子に恨みを持っているのでは、と。しかも、岡田からの警告状が明智小五郎事務所にまで送られてきたのだ。明智小五郎は、助手に対して、岡田の調査を行うよう指示を行った。明智は、犯人が芸術家である、ということを確信したのだ。岡田の生地、東北に向かった明智は、墓を暴いたのだが、土葬されたはずの岡田の遺体はそこにはなく、またしても明智に対する警告状が残されていた。

 一方、東京でも事件が起こった。倭文子が執事の斎藤を殺したというのだ。しかも、倭文子は茂を連れて屋敷から消えてしまったように思われた。実は、倭文子は茂を連れて、屋敷の一角にある古井戸の底にいた。そこで、三谷に倭文子は事件のあらましを話していた。斎藤と口論をしていたとき、わずかの間に目を離した間に、斎藤の胸にナイフが刺さっていた、というのだ。逃亡のため、夜の間に三谷は柩の中から斎藤の遺体を運び出し、その中に倭文子と茂を匿うことにした。隙を見て柩から倭文子と茂を連れ出そうとした三谷だったが、しかし倭文子から連絡があるかもしれない、ということで恒川警部補の目が離れることがなかった。倭文子と茂を入れた柩は、火葬場へ運ばれて行ってしまう。そんな時、明智は一階の天井裏に隠し部屋があることに気づいた。隠し部屋に宝石が隠してあったことから、犯人がその宝石を盗みに来たとき、倭文子と斎藤の口論を目にし、ナイフを投げつけて斎藤を刺殺したに違いない。その証拠として、ナイフの鞘が残されていた。倭文子が斎藤を殺したのではないことが明らかになったとき、三谷は先ほど火葬場に運ばれた柩の中に倭文子と茂を隠したことを、明智と恒川警部補に告げた。火葬場で危うく焼け死ぬところだった倭文子と茂は、そのおかげで間一髪救われた。

 そして、事件の調査に従事している明智もまた倭文子に惹かれつつあったのか、倭文子の過去を聞き込もうとしたのだが、三谷に邪魔されてしまう。倭文子の求婚者であるという三谷に対して、明智もまた静子に求婚するつもりだと語り、口論の末、三谷を殴りつけてしまう。明智は助手の文代に三谷に謝りに行ってもらい、歯の治療と慰謝料を支払った。

 事件の元は過去にある、と推理した明智は、倭文子の故郷である信州へ向かった。そこで谷山二郎という男が自殺したことを聞き込み、その弟・谷山三郎が復讐のため倭文子を狙っていることを突き止めた。残された写真に写されていた谷山三郎の顔を見た明智は愕然とする。また、岡田の遺体も墓のある寺の裏山から発見され、今回の事件の犯人は谷山三郎であることがはっきりとした。

 しかし、その頃、倭文子と茂は、谷山三郎に再び捕まってしまった。谷山三郎は二人を生きたまま氷柱にしようとしているのだ! 果たして、明智は倭文子と茂を救うことができるのか!?
 

感想: 

 本作は、土曜ワイド劇場《美女シリーズ》の記念すべき第1作である。パイロット版という性格もあることから、続くシリーズとは異なっている部分も多い。一番の相違点は、荒井注演じる波越警部が登場していないことだろう。恒川警部補も悪いキャラではないのだが、やはり波越警部のアクの強さには敵わない部分がある。本作から事件の内容以上に陰惨な感じを受けるのは、コメディリリーフとしての波越警部の有無に拠るところが大きいと言えるだろう。
 
 また、かの変装剥がしシーンも完成されていない。本当の意味での変装剥がしシーンが完成するのはもっと後のことだが、本作での変装は明智の自前ではない。東京中を探し回って、犯人が使用したものと同じマスクを手に入れたという展開になっている。

 加えて、《美女シリーズ》名物・美女のお風呂シーンも、本作にはない。三ツ矢歌子演じる倭文子の凌辱シーン(吹き替え)はあるので、美女裸身シーンが売りの一つであることは念頭にあるのだろうが、本作では未だに《美女シリーズ》のフォーマットは完成していない、ということになる。

 さて、猟奇的な作風である第1作だが、意外にも探偵・明智小五郎がしっかりと描かれている。犯罪美学云々の部分は正直取っ付きにくい部分があるが、事件解決のための重要な手がかりの入手方法はあまりにもさりげなく描かれているため、初見ではそれと気づく人は少ないのではないだろうか。探偵・明智のこのような描写があるからこそ、《美女シリーズ》は単なるエログロ全開ドラマにはならなかったのであろう。
 

見どころ:

  • 明智先生の今回のお車

  •  トヨタ・マークU、もしくはチェイサー(色は黄色)。ドアの数が4枚ならマークUなのだけど、確認できず
     トヨタ・マークII2ドアハードトップ、色はゴールドメタリック、ナンバーは「品川 57 そ23−90」(明智くん様ご指摘)
     
  • 吸血鬼の使用車

  •  トヨタ・コロナセダン、色はダークグリーン、ナンバーは不明
     『死刑台の美女』では明智が運転しており、『大時計の美女』では股野の車として使用されるなど、シリーズ中もっとも使用されている車(明智くん様ご指摘)
     
  • 明智先生が、文代を拝み倒して、三谷に謝りに行ってもらうところ
  •   文代を拝み倒す明智
      ニヒルでクールな明智先生が、情けなさそうな表情を見せるところが萌え☆
      このシーンが、陰惨な殺人事件が起こっているドラマの中で、一抹のユーモアを醸し出している。
      俳優としての天知茂の上手さが冴えていると言ってもいいだろう
     
     

    下のロゴにマウスポインタを乗せると、画像代替の文字列として、今回の明智先生の変装がネタばれされます。
    今回の明智先生は、岡田に扮した三谷に化けてます
     
     
     

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